障がい越えた学び目標 -古堅小の取り組み
2019/02/24(日)
育英義塾教員養成学院では、明星大学通信教育部との教育業務提携で特別支援学校教諭1種免許状を取得することができます。
今回は、特別支援学校教諭免許状を取得希望の皆さんに、その道の専門家である大沼直樹先生の障がい児教育への思いをご紹介したいと思います。
「障がい越えた学び目標 -古堅小の取り組み 特筆に値」 大沼直樹
日本は「障害者の権利条約」のもと「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築のための特別支援教育」(2011年)を推進している。インクルーシブ教育は、個々のニーズを中心に捉え、障がいの有無にかかわらず、子どもたちが同じ空間で共に学び、共に育つことを理念として掲げ、誰も排除しないことを理想とする。これは、学校教育の本来あるべき姿といえる。現実は原発事故で避難している児童・生徒へのいじめ、津久井やまゆり園での事件、ヘイトスピーチ等、理想には程遠い。しかも、障がい児の増加、少子超高齢化、人口減少の時代を迎えている。
従って、国民が共生社会を志向していかなければ、この国の将来は危ういものとなる。以上の問題意識に立ち、国立特別支援教育総合研究所と件教育委員会主催「インクルーシブ教育システム普及セミナー」(17年12月)に参加した。インクルーシブ教育推進センターよりわが国の活動の全体像、読谷村立古堅小学校校長による「学校のチャンスを生かす、ともに楽しみ学び育つ教育実践」、琉球大学大学院准教授より沖縄県の現状及び課題について報告があった。
私が注目したのは古堅小の報告であった。当校は、特別支援学級と通常学級において、福祉機関と専門家と連携し、肢体不自由児のA児らと共に楽しむインクルーシブ教育を学校経営の柱の一つとしていた。
例えば、A児に対する実践は①教育内容・方法②支援体制-という肢体不自由児教育の二つの観点からの合理的配慮がなされ、説得力のある報告であった。電動車いすの使い方を、作業療法士や高学年の子ども達が工夫する。また、A児と同じ走順の子どもが跳び箱を50回跳んだ後に走る。A児の願いを果たすために教員とクラスの仲間が知恵を出し合う、等々。
結果、運動会で皆の声援を受けて自力で電動車いすを操作して目的を達成した。A児のニーズに応じ、仲間同士が連携していく過程で、周囲の子どもや教員の意識や行動が徐々に変化していった。
多くの聴講者が最も感動したのは「違うクラスだけど応援してくれたよ。この学年で良かった!!」というA児の言葉であった。障がいの有無を越えたインクルーシブ教育の成果が認められた瞬間であった。
沖縄の「命どう宝」「ゆいまーる」という文化を背景とし、「障害のある人もない人も共に暮らせる社会」を究極の目標とした古堅小のインクルーシブ教育への挑戦は、わが国の教育実践史上において特筆に値する。
(沖縄タイムス 2018年4月9日)